ニコリと、はじめてのお客さま 表紙

ニコリ個人シリーズ 第2話。森の占いの館「らとらぼ研究所」に、はじめてのお客さまが訪ねてくるお話です。

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アプリコッ島の森の奥に、小さな占いの館があります。
その名は、らとらぼ研究所。
心の声を聞く占い師、ニコリの大切な場所です。

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「リンっ♪ おはよう、ハル。今日も、館を整えようね」
ニコリは、ふたつのハートをそっと光らせながら、テーブルをふき、カードを並べました。
ハルは、窓のそばで丸くなって見守っています。

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「今日のカードは……『はじめての扉』。誰かが、勇気を出してここへ来るのかもしれないね」
ニコリの直感は、よく当たります。
森の空気は、昨日よりも少しだけ、あたたかく感じました。

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そのとき、森の入り口で、かさり、と小さな音がしました。
草むらの影から顔を出したのは、小さなリスのお客さまでした。
お客さまが、この館を訪ねるのは、今日がはじめてでした。

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リス「……あの、ここは……心の声を、聞いてもらえる場所ですか」
ニコリ「リンっ♪ ようこそ。あわてなくて大丈夫。ゆっくりでいいよ」
リスの手は、小さく震えていました。
ハルは驚かさないように、少し離れた場所で座りました。

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ニコリ「うまく言えなくてもいいよ。心の中にあるものを、そのまま置いてみて」
リスは、しばらく黙っていました。
でも、ニコリには聞こえていました。
言葉にならない、小さな心の声が。

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ニコリ「……うん、聞こえたよ。『進みたいのに、どっちへ進めばいいか分からない』そう感じているんだね」
リス「……どうして、分かるの?」
ニコリは、やさしく微笑みました。
心の声を聞くことは、当てることではありません。寄り添うことです。

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ニコリ「では、カードに聞いてみよう。左は、これまでの気持ち。真ん中は、今の気持ち。右は、心が向かいたい先」
リスは、真ん中のカードをじっと見つめました。
そこには、小さな光の絵が描かれていました。

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ニコリ「リンっ♪ 答えはね、外に探すものじゃなくて、心の中で、もう光っているものなんだ。その光に気づくお手伝いを、占いはしてくれるんだよ」
リスの目に、少しずつ力が戻ってきました。

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ニコリは、リスを連れて、館の裏の星読みの泉へ歩きました。
速すぎず、遅すぎず。リスの歩幅に合わせて。
導くというのは、引っぱることではなくて、隣を歩くことなのです。

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ニコリ「泉をのぞいてみて。浮かんでくる気持ちが、今の心の答えだよ」
水面には、アプリコットの木と、空と、リスの顔が映りました。
リスは、はっと息をのんで、そして小さくうなずきました。

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リス「……分かった気がする。怖かったのは、道じゃなかった。自分の気持ちを決めることが、怖かったんだ」
ニコリ「気づけたね。それが、今日のいちばんの宝物だよ」
リスの胸のあたりで、ほのかな光が、ぽっと灯りました。

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リス「ありがとう。来てよかった」
ニコリ「リンっ♪ こちらこそ、ありがとう。勇気を出して来てくれて」
ふたつの「ありがとう」が重なったとき、ニコリの手のひらに、小さな光の実が宿りました。
第1話で生まれた光と並ぶ、新しい感謝の実です。

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ニコリ「迷ったら、またおいで。この館の明かりは、いつもつけておくからね」
リスは、何度も振り返りながら、森の小道を帰っていきました。
来たときよりも、足どりは軽くなっていました。

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ニコリ「今日は、はじめてのお客さまが来てくれた日だね、ハル。小さな一歩って、こんなに大きな光になるんだね」
遠くの島では、まだ見ぬ冒険が続いていることを、ニコリはまだ知りません。
でも、運の輪が少しずつこの森に近づいている予感は、今日も静かに続いていました。

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次回――『ニコリと、感謝の実のゆくえ』。
集まった小さな光が、やがて誰かを照らすお話。
「リンっ♪ お楽しみに」