ニコリと、感謝の実のゆくえ

ニコリ個人シリーズ 第3話。ふたつの「ありがとう」から生まれた感謝の実。そのひとつが、まだ見ぬ誰かのもとへ旅立っていくお話です。
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らとらぼ研究所の棚の上には、小さな光の実が、ふたつあります。
ひとつは、迷子の小鳥が帰れた日の「ありがとう」。もうひとつは、はじめてのお客さまの「ありがとう」。
どちらの実も、あたたかい光で館を照らしていました。
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ニコリ「リンっ♪ おはよう、ハル。見て、二つ目の実がなんだかそわそわしているよ」
ハルは、棚の上をじっと見つめました。小さな実は、光ったり、弱くなったり。
まるで、何かを伝えたがっているようでした。
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ニコリ「……うん、聞こえた。『ここにいるだけじゃ、もったいない』……行きたい場所が、あるんだね」
心の声は、人だけのものではありません。
「ありがとう」から生まれた光にも、ちゃんと気持ちがあるのです。
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その日は、朝から風の強い日でした。窓の外では、木の葉がくるくる踊るように舞っています。
ニコリ「今日の風は、遠くまで行きそうだね、ハル」
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そのとき、窓辺に小さなお客様がやってきました。巣に帰れなくなって、ニコリに導いてもらった、あの小鳥です。
ニコリ「リンっ♪ 久しぶりだね。元気に飛べるようになったんだね」
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小鳥は、棚の上の実をじっと見つめていました。すると、二つ目の実が、小鳥の前でぱっと明るく光りました。
まるで、「連れて行って」と言っているみたいに。
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ニコリ「……そうか。この実はね、ハル。『ありがとう』を、まだ知らない誰かのところへ、行きたがっているんだ」
ニコリの直感は、よく当たります。遠くで、心が冷えて、ひとりでうずくまっている誰か。
その気配が、風に混じって届いていました。
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ニコリ「お願いできるかな。この光を、冷えている心のそばに届けてほしいの。リンっ♪ きっと、あなたの羽なら届けられる」
小鳥は、小さくうなずいて、光の実をそっと受け取りました。
実の光は、小鳥のまわりをやさしく包みました。
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小鳥は、光を連れて窓の外へ飛び立ちました。ニコリとハルは、小さくなる背中を、ずっと見送っていました。
ニコリ「いってらっしゃい。きっと、届くからね」
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光は、森の上を旅しました。木々の緑を越えて、川のきらめきを越えて。
風が、やさしく背中を押してくれていました。
「ありがとう」の光は、どこへ行っても、消えることはありません。
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夕方、小鳥の姿は海の向こうへ渡っていきました。光は、だんだん小さくなって、やがて夕焼けに溶けていきました。
ニコリ「きっと今夜、どこかで新しい『ありがとう』が生まれるね、ハル」
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館に戻ると、棚の上には一つ目の実が残っていました。その光は、旅立った実を見守るみたいに、静かに、穏やかに瞬いています。
ニコリ「残る光も、あるんだね。見送ることも、占い師の大切な仕事だね」
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ニコリは、今夜も館の窓に明かりをともしました。
ニコリ「迷ったら、またおいで。この館の明かりは、いつもつけておくからね」
はじめてのお客さまとの、約束です。
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すると、森の小道の向こうから、小さな足音が聞こえてきました。明かりを頼りに来た、あのリスです。
リス「あの……決めた道、歩き出せたよ。それを、伝えたくて」
ニコリ「リンっ♪ 聞かせてくれてありがとう。……そう、光は旅立ったの。きっと、あなたのところにも巡ってくるよ」
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「ありがとう」は、手渡したら終わりではありません。誰かの心をあたためて、また新しい「ありがとう」を生んで、巡っていくもの。
ニコリは知っています。その大きな輪が、少しずつこの森にも近づいていることを。
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次回――『ニコリと、風のたより』旅立った光の、その先で生まれた「ありがとう」が、風に乗って届くお話。
「リンっ♪ お楽しみに」
